芸備線は「上下分離」視野か 検討参加申し入れ JR西日本が新見市・庄原市など自治体に

JR西日本は、芸備線沿線の関係自治体に対し、法律に基づく地域公共交通計画の作成に向けた検討を始めるよう申し入れを行いました。

芸備線道後山駅付近を走行中のJR西日本キハ120形気動車(峠ちゃん/写真AC)
芸備線道後山駅付近を走行中のJR西日本キハ120形気動車(峠ちゃん/写真AC)

芸備線は備中神代駅(岡山県新見市)〜広島駅(広島市)間159.1kmの路線です(路線図は下図を参照)。JR西日本はこれまで「快速庄原ライナー」の運転、観光列車「〇〇のはなし」などのイベント列車の運転、大型キャンペーンに合わせた朝時間帯の増便など、地域と連携して活性化の取り組みを行ってきたとしています。

しかしながら、人口減少や少子高齢化、道路を中心としたまちづくりが進み、取り巻く環境が大きく変化しているとしています。さらに、岡山県から広島県にまたがる路線の中で、利用状況が区間により大きく異なっているため、地域の将来と移動ニーズに適した「地域公共交通計画」の作成または見直しを早急に行う必要があると説明しています。

JR西日本は今回、岡山県新見市〜広島県庄原市内の駅と沿線地域を検討対象区域に定めました。地域公共交通計画の作成・見直しに向けた検討の場の設定または参加について、2021年7月頃に検討を開始するよう関係自治体に申し入れを行っています(岡山県、新見市ならびに庄原市には6月8日(火)付、広島県には6月14日(月)付)。

今後、各自治体とJR西日本が中心となり、必要により有識者や対象地域の交通事業者が参画して話し合う体制が取られます。地域の現状や公共交通の利用状況、移動特性やニーズなどを把握した上で、芸備線の利用促進について検討していくとのことです。

【路線図で解説】JR西日本 芸備線路線図

「地域公共交通の活性化及び再生に関する法律」では、民間事業者による公共交通の維持が困難となる中で、地方自治体が中心となって移動手段の維持と確保に向けて取り組むことが求められています。その核となる地域公共交通計画は、「地域にとって望ましい地域旅客輸送サービスの姿」を明らかにするマスタープランとしての役割を果たすものです。

このマスタープランをもとに「地域公共交通特定事業」の実施計画を作成し、国土交通大臣に認定されると、スムーズに実施できるよう法律上の特例が受けられます。

地域公共交通特定事業として定められている枠組みの一つとして、継続が困難な鉄道事業の存続を図る「上下分離方式」(沿線自治体が鉄道線路を保有し、運行事業者に無償で使用させる鉄道の運営形態)があります。これには、自治体と事業者が協働で事業計画を作成する必要があります。JR西日本は鉄道存続の条件として、上下分離による構造改革も視野に入れていると思われますが、関係自治体が相応の負担を行うことが前提となります。各自治体がこれを許容するかどうかが鍵となるため、話し合いの行方は現時点では不透明です。