韓国に行けないJR九州高速船「クイーンビートル」 国内遊覧コースで苦渋のデビュー

運休中の日韓航路のために新造されたJR九州高速船の新型高速客船「クイーンビートル(QUEEN BEETLE)」は、国内遊覧運航でデビューします。

日韓定期航路に就航できず博多港に係留されているJR九州高速船の「QUEEN BEETLE(クイーンビートル)」(写真AC/らびっこ)
日韓定期航路に就航できず博多港に係留されているJR九州高速船の「QUEEN BEETLE(クイーンビートル)」(写真AC/らびっこ)

1991年、当時のJR九州船舶事業部が高速船「ビートル(BEETLE)」による福岡〜韓国・釜山航路の運航を開始しました。2005年に船舶事業は分社化して「JR九州高速船」となりましたが、九州と韓国を約3時間で結ぶ利便性の高さから航空機に代わる海上国際アクセスとして認知され、日韓両国で約30年にわたり人気を博してきました。

「ビートル」の後継船となる赤い胴体の新型高速客船「クイーンビートル」は、オーストラリアの造船会社AUSTAL社で建造され、2020年10月15日に博多港に入港しました。しかし、新型コロナウイルス感染症の拡大にかかる水際対策としての政府からの要請を受け、日韓定期航路は2020年3月9日から運休が続いています。就航の目処が立たない中で「クイーンビートル」は博多港に係留されたままとなっており、JR九州高速船は「事業存続の危機に立たされている状況」と説明しています。

同社は社員の雇用、船体の維持を図るため、日韓定期航路再開までに限定したクイーンビートルの国内遊覧運航について、国土交通省と話し合いを続けてきました。同社の厳しい状況を踏まえて国交省は、船舶法に基づく「沿岸輸送特許」により就航を許可し、クイーンビートルはかたちを変えて就航の日を迎えることとなりました。

福岡県大島にある宗像大社沖津宮遙拝所(写真AC/ヨシボー)
福岡県大島にある宗像大社沖津宮遙拝所(写真AC/ヨシボー)

2021年3月20日(土・祝)・21日(日)および27日(土)に運航されるコースは、福岡県沖ノ島と大島を海上から眺められる「沖ノ島遊覧コース」です。2つの島は「『神宿る島』宗像・沖ノ島と関連遺産群」の構成資産として、2017年に世界文化遺産に登録されました。乗船特典として、宗像大社の3種類(辺津宮・中津宮・沖津宮)の紙御朱印がプレゼントされます(御朱印帳への授与はできません)。

また、船内ショップでは、デザインを担当した水戸岡鋭治によるオリジナルのクイーンビートルグッズが、KIOSKでは大分の創作和食店「方寸」監修による軽食類が販売されます。

各日とも博多港国際ターミナル(中央ふ頭)を9:45に出港し、沖ノ島・大島方面を巡る154kmの航路を遊覧した後、博多港に13:15に到着します。この遊覧コースは乗船券のみの販売は行われず、旅行会社(JR九州およびHIS九州)のツアー商品への申し込みが必要となります。